MONTHLY, No.11, Vol.19, 商品性向上

X線を用いた材料解析について 放射光施設と実験室

『夢の光』放射光をご存知でしょうか。世界各地に大型の放射光施設がありますが、日本にも「SPring-8(スプリングエイト)」や「KEK-PF(フォトンファクトリー)」など世界水準の施設があります。放射光施設は先端的な研究に活用されており、様々な分野で日々新しい発見がなされています。

放射光というのは亜光速の電子を電磁石で曲げたときに生じる強力な電磁波のことで、この放射光を得るために巨大な施設が必要になります。放射光施設では強力なX線を用いた実験が主に行われています。放射光施設で行う分析の一例としてX線吸収微細構造(XAFS)という手法があります。XAFSは特定元素の吸収端付近で得られるX線吸収スペクトルを解析し、元素の電子状態や原子レベルでの局所環境構造に関する情報を得る分析手法です1) 。吸収率の僅かな変化を検出するため、放射光施設の強力なX線が必要になります。

当社X線分析チームではSPring-8などを利用して、自動車用触媒、充電または放電時における電池材料のin-situ反応解析などを実施しています。実際の使用環境を模して触媒や電池の反応に伴う構造・状態の変化を短時間で追跡する分析手法は、強力なX線を有する放射光施設だからこそ可能だと言えます。放射光施設や放射光を用いた実験についてはSPring-8のホームページ2) などをご参照ください。

写真1 SPring-8全景 (提供:SPring-8)

X線を用いた分析手法はいくつかの種類に分けることができます。構造解析を目的とした場合、先述したXAFSの他に、X線の回折・散乱を用いた手法が挙げられます。なかでもよく知られ、広範囲に用いられているのは「X線を用いて物質を構成する原子の配列に関する情報を得る」というX線回折(XRD)3) です。X線の回折・散乱現象を利用して、目的に合わせた最適な装置を用いることで、実験室でも様々な有益な情報を得ることができます。表1に実験室でも行える代表的なX線分析法とその用途、特徴などをまとめて示します。

表1 当社実験室装置を用いたX線分析法と特徴

分析法 略号 用途 測定領域 測定環境 当社装置の特徴
X線回折 XRD 結晶構造 ・数10μm
~ 数cm
・反応ガス高温雰囲気(~900℃)
・電池反応
(充放電)
・大気非暴露
・ヨハンソンモノクロメータによるKα1測定
・平行ビーム光学系
・WAXS測定
(透過二次元回折像測定)
・リートベルト解析
高分解能
X線回折
HR-XRD 薄膜

単結晶
・数cm ・加熱
(~900℃)
・雰囲気制御
(真空・不活性ガス)
・ゲルマニウム4結晶モノクロメータによる単色化
・高分解能逆格子マッピング
・ロッキングカーブ測定
残留
応力
RS 残留応力 ・数10μm
~ 数mm
・加熱
(~900℃)
・残留応力マッピング
・深さ方向応力分布
・2D法(多軸応力解析)
配向 結晶配向評価 ・数10μm
~ 数mm
・加熱
(~900℃)
・雰囲気制御
(真空・不活性ガス)
・極点図測定
・配向係数評価
・広域逆格子マッピング
X線
反射率
XRR 膜厚

密度
・数cm ・加熱
(~900℃)
・雰囲気制御
(真空・不活性ガス)
・ゲルマニウム4結晶モノクロメータによる単色化
・薄膜の線膨張係数評価
X線
小角散乱
SAXS
(U-SAXS)
ナノサイズの構造評価 ・1mm
~数mm
・湿度制御
・ガス雰囲気制御
・低温・高温測定
(-100~500℃)
・X線反射小角散乱
(GI-SAXS)
・超小角散乱
(数100 nm程度のサイズまで可能)
・二次元小角散乱像

※測定領域は最小から最大まで、測定環境は最大範囲を示しており、
アプリケーションにより制限があります。詳細はお問い合わせください。

X線分析チームでは放射光施設や実験室の装置を用いて材料の解析を実施しています。装置の特徴やアプリケーションについて次号以降に紹介させていただきます。

 

1) XAFSに関する技術資料をご用意しています(P-106、115)。
当社技術営業部にお申し付け下さい。

2) http://www.spring8.or.jp/ja/

3) 小誌Vol.19 No.8 (2010.08)でもご紹介しましたが、成書も多く出版されておりますので
詳細につきましてはそれらをご参照ください。

お問い合わせ先

日産アークは最良の分析法で
みなさまのご要望にお応えいたします。
 

■構造解析グループ X線分析チーム
  • 高橋洋平
  • 櫻井裕樹