イメージングIRによる溶着界面の結晶化度解析

樹脂材料の接合には接着剤を用いる手法が一般的ですが、最近では低コスト化や環境への配慮から、接着剤を使用しない熱板溶着法が注目されています。この熱板溶着法に用いる材料や成形条件の選定には溶着界面での高分子の相溶性や高次構造を知ることが重要になります。高分子材料の分子構造を調べるひとつの方法として赤外分光分析法 (IR) が用いられますが、当社では微小部分の分子化学情報を二次元分布として表現するイメージングIR法を確立し、多くのお客様にご利用いただいています1)2)。今回は溶着界面および界面付近の結晶化度に着目した解析事例をご紹介します。

1. 熱板溶着試料

汎用樹脂であるポリアミド樹脂 (PA6) を用いて熱板溶着試料を作製しました。これらの試料について、強度試験を実施したところ溶着温度により強度に差がみられました。図1に溶着温度と引張り試験の結果を示します。図1より破断強度は260℃が最も高く、240℃に比べ約3倍の値を示しました。なお、280℃では溶着部に多数のボイドが発生し、強度が低下したため、イメージングIRによる解析は240℃および260℃で作製した試料を用いました。

-熱板溶着条件-
・溶着温度:240℃, 260℃, 280℃
・溶着時間:20sec
・作動圧力:0.2Mpa

2. 赤外吸収バンドの選定

イメージ像の測定には、PA6の赤外吸収バンドの選択が必要になります。結晶に由来するバンドを決めるため次のような測定を行いました。
1) PA6を230℃に昇温後、徐冷して室温で測定
(以下熱処理品と呼びます)
2) PA6を230℃に保持してin-situ 測定
(以下溶融状態と呼びます)
その結果を図2に示します。
熱処理品において認められる1040cm-1、970cm-1および929cm-1のバンドは230℃溶融状態において消失することから、これらは結晶に由来するバンドと考えられます。また、1074cm-1と980cm-1は非晶鎖と判断されます。
以上より、929cm-1 (結晶バンド) と1074cm-1 (非晶バンド) のバンドを用い、溶着界面部の結晶化度の分布を可視化しました。なお、結晶構造は図3に示すようにすべてα晶と仮定しました。

3.溶着界面のイメージング

図4にイメージングIRを行う試料の採取方法と測定条件を、図5に溶着部の断面観察像と結晶化度イメージ像を示します。画像の中心部が溶着部です。結晶化度イメージ像から、溶着部周辺では結晶化度が高いことがわかります。また、溶着温度260℃は240℃に比べ、樹脂内部まで結晶化が進行している状況が伺えます。

図5の破線上における結晶化度の強度プロファイルを図6に示します。このプロファイルから次のようなことがわかります。

1) 両試料とも溶着界面 (a部) の結晶化度は低く、界面から数百μm離れた位置で結晶化度は最大値に達しています (b部) 。なお、溶着温度260℃は240℃に比べ、溶着界面での結晶化度がやや高く、最大値は界面に近くなっています。
2) 溶着界面から離れた部位 (c部) における結晶化度は、溶着温度260℃の方が高い値を示し、溶着時の熱が広範囲に及んでいることがわかります。

以上のように溶着部近傍の結晶化度の変化を可視化することできますので、溶着条件などの検討にイメージングIRをご利用ください。

*hot plate welding:プラスチックの溶接面を加熱した金属に軽くあてて、表面層を溶かした後に、面を軽い圧力で押さえて接合する方法。
(図解 プラスチック成形加工用語辞典、工業調査会、1990.1)

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