斜交型X線CT (X線顕微鏡 3D-XRM) により、大面積試料を切断加工することなく、短時間にサブミクロンの高空間分解能で内部を非破壊観察することが可能です。
【目次】
1.斜交型X線CT (X線顕微鏡 3D-XRM) とは
2.X線CTの原理と課題
3.3D-XRMの原理
4.3D-XRMの特徴
特徴1) 高コントラスト・高分解能
特徴2) 大面積対応
特徴3) 短時間撮影
5.観察事例
(全固体電池 / 複合材料 / 化粧品)
6.最後に
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1.斜交型X線CT (X線顕微鏡 3D-XRM) とは
斜交型X線CT (X線顕微鏡 3D-XRM) は、大面積試料を切断加工せずに高コントラスト、高空間分解能で非破壊観察することができる装置です。
斜交型レイアウトの採用により、X線源を試料に十分近づけて撮影を行うことができ、一般的な直交型X線CT装置では観察の難しい大面積試料も高い空間分解能で観察することが可能です。
日産アークでは、Sigray社製斜交型X線顕微鏡 (Apex XCT 150) を国内初導入し、従来のX線CTでは実現困難なレベルの高分解能観察を提供しています。
斜交型レイアウトの採用により、X線源を試料に十分近づけて撮影を行うことができ、一般的な直交型X線CT装置では観察の難しい大面積試料も高い空間分解能で観察することが可能です。
日産アークでは、Sigray社製斜交型X線顕微鏡 (Apex XCT 150) を国内初導入し、従来のX線CTでは実現困難なレベルの高分解能観察を提供しています。
2.X線CTの原理と課題
X線CTは、試料を回転させながら多数のX線透過像を撮影し、それらを再構成することで三次元像を得る手法です。
一般的なX線CTは、試料の回転軸とX線の透過方向が直交した直交型光学系を採用しています。直交型の場合、X線の透過方向と試料の回転軸が直交するため、平板状の試料の撮影に課題が生じます (図2)。
これは試料の回転に伴い、試料の平面方向を撮影する場合と板厚方向を撮影する場合でX線の吸収量が大きく異なることに起因します。また、試料の大きさによっては、X線源との衝突を避けるために遠ざける必要があります。このような場合、高コントラストかつ高分解能な三次元像を得ることが難しくなります。
一般的なX線CTは、試料の回転軸とX線の透過方向が直交した直交型光学系を採用しています。直交型の場合、X線の透過方向と試料の回転軸が直交するため、平板状の試料の撮影に課題が生じます (図2)。
これは試料の回転に伴い、試料の平面方向を撮影する場合と板厚方向を撮影する場合でX線の吸収量が大きく異なることに起因します。また、試料の大きさによっては、X線源との衝突を避けるために遠ざける必要があります。このような場合、高コントラストかつ高分解能な三次元像を得ることが難しくなります。
3.3D-XRMの原理
導入した3D-XRMは、試料の回転軸がX線の透過方向に対して斜めに傾いた斜交型を採用しています (図3)。
これにより、一般的な直交型X線CT装置に比べ、大面積の試料を非破壊で鮮明に観察することが可能となっています。さらに新設計の光学系を採用することで、斜交型でありながらも縦断面像においても高い空間分解能を実現しています。
これにより、一般的な直交型X線CT装置に比べ、大面積の試料を非破壊で鮮明に観察することが可能となっています。さらに新設計の光学系を採用することで、斜交型でありながらも縦断面像においても高い空間分解能を実現しています。
4.3D-XRMの特徴
特徴1) 高コントラスト・高分解能
高輝度なX線源と高効率な大型検出器に加え、独自の光学系を採用することにより最小0.5μmの空間分解能での測定が可能です。
半導体チップと外部取出し部までをつなぐために基板上に形成された再配線層 (RDL) を観察した事例を図4に示します。既存のハイエンド装置では不明瞭だった再配線層 (RDL) 中のクラックが、本装置の高コントラスト、高分解能により明瞭に観察できています。
特徴2) 大面積対応
斜交型とすることにより、試料サイズの大小に関わらずX線源との距離を近づけられ、従来のハイエンドX線CT装置でも不可能であった直径300mm程度の大面積試料の高分解能測定が可能です。
大面積試料の例として、繊維強化プラスチック (FRP) 製のトレイを観察した事例を図5に示します。250mm×200mmのトレイを切断することなく、樹脂内部のガラス繊維やクラック、ボイドなどを観察することができました。
特徴3) 短時間撮影
試料サイズとX線CTでの観察時間の概念図を図6に示します。従来の直交型X線CT装置では、ハイエンド機であっても一定の分解能を確保する場合、試料の平面サイズの増加に伴い観察時間が大幅に増大するという問題がありました。
導入した3D-XRMでは、斜交型の光学系を採用することで、試料の平面サイズによらず高い分解能を維持したまま、短い観察時間で測定を行うことが可能です。
また、電池断面を導入した3D-XRMで観察した結果と直交型ハイエンド装置で観察した結果を図7に示します。導入装置での撮影時間は数時間で、従来のX線CT装置での撮影時間は10時間程度です。従来の直交型X線CT装置に比べ、半分以下の短時間でより高コントラスト、高分解能な観察が可能です。
5.観察事例
・全固体電池の観察事例
3D-XRMを用いて、従来装置に比べて圧倒的に高い空間分解能で観察ができ、全固体電池の活物質と固体電解質界面の様子や空隙などを三次元的にとらえ、定量的に評価することが可能となりました。
▶ 『全固体電池セルの高分解能非破壊観察 (F519)』
・複合材料の観察事例
3D-XRMを用いて、PP/CMF/MAPP複合材におけるCMFの分散状況を観察しました。マレイン酸変性PP (MAPP) の有無によるCMF分散性の違いが確認できるとともに、画像解析によりCMF凝集体の粒度分布を数値化することができました。
▶ 『セルロースマイクロファイバー (CMF) 複合材三次元分散性評価 (F179)』
・化粧品の観察事例
3D-XRMを用いて、化粧品中の微小な配合成分を可視化・定量化することができます。口紅やサンスクリーンなどの化粧品について非破壊観察を行いました。製品中の微細な添加剤などを三次元的にとらえ、定量的に評価することが可能となりました。
▶ 『高分解能X線顕微鏡による化粧品の非破壊三次元観察 (F181)』