X線回折 (XRD) の原理・測定方法と解析技術をわかりやすく解説

X線回折 (XRD: X-Ray Diffraction) 法は、試料にX線を照射したときに観察されるX線回折パターンから物質の同定・定量・結晶構造解析・残留応力測定などを行うことが可能な分析手法です。

XRDは、一般に様々な形状の固体試料に適用でき、非破壊で分析を行うことが可能な汎用性に優れた手法です。以下では、XRDの原理、特徴、解析方法などをわかりやすく解説します。

【目次】
 1.X線回折 (XRD) 法とは
 2.XRDの測定原理
 3.XRDからわかること
 4.XRDの測定方法:反射法と透過法
 5.XRDの解析技術
 6.XRDの分析事例
 
[It's New! ]

日産アークでは、あらたに透過能力に優れる高輝度なAg線源を搭載したXRD装置を新規導入し、従来からの反射法に加え、透過法による測定もラボレベルで可能となっています。

これまで放射光での測定を必要とし、長いリードタイムを要した測定も、ラボでタイムリーに受託分析を行うことができるようになりました。

新型XRD装置は、温度調節機能のほか、電池の充放電ラミネートセルの加圧機能XYステージ等を備えており、充放電に伴うラミネート型電池内部の電極材料について構造変化等の2次元マッピングも可能となっています。詳細につきましては、お問い合わせください。

▶ 新型XRD装置の活用イメージは、こちら

1.X線回折 (XRD) 法とは

X線回折 (XRD) 法は、物質ごとに原子の並びの周期性が異なることを利用した、基本的な分析手法のひとつです。

原子が規則正しく並んでいる結晶性物質に、X線を照射して現れる回折線を測定します。測定結果をデータベースと照合することで、試料の結晶構造や分子構造を調べることができます。
 
分析対象は、金属材料、セラミックス材料のほか、高分子材料にも対応しており、電池や触媒などに使われる材料の解析や未知の試料を同定することも可能です。

また、照射するX線を絞ることで微小部領域の集合組織の解析、結晶格子のひずみの様子から物質にかかった残留応力を測定することもできます。

2.XRDの測定原理

X線を試料に照射したときに観察される回折は、結晶構造や格子の大きさにより生じる角度が変わります。回折が観察される角度は、以下のブラッグ条件に従います。

2 d sinθ = n λ


ただし、
   d:試料に含まれる結晶質の格子面間隔
   θ:X線の試料への入射角
   λ:入射X線の波長
   n:任意の整数 (通常は n=1)

XRDで得られる測定データ


XRDでは、ブラッグの法則にしたがって生じる試料からの回折強度を測定し、回折パターンを得ます。得られた回折パターンとライブラリにある回折ピークの位置や強度等を比較し、物質の同定を行うほか、種々の解析手法により定量や構造に関する詳細な情報を引き出します。

3.XRDからわかること

XRDで測定される回折パターンは、結晶質か非晶質かで大きくことなります。

原子配列に三次元的な周期性をもつ結晶質からは鋭いピークが、周期性の低い非晶質からはハローとよばれるブロードなピークが得られます。
 
結晶質から得られる回折ピークにおいて、そのピーク位置からは定性分析や結晶の格子定数に関する情報を得ることが可能です。また、ピークの半値幅から結晶子サイズや格子ひずみを解析することが可能です。
 
結晶質から得られるピーク面積を積分した積分強度を用いて定量分析を行うことができます。試料に非晶質が含まれる場合は、非晶質部の積分強度と比較することで結晶化度に関する情報を得ることが可能です。

4.XRDの測定方法

XRDの測定方法には、反射法と透過法があります。主な特徴を表に示します。
 
表 X線回折における反射法と透過法
反射法透過法
原理X線が試料表面で反射される際に生じる回折を測定し、回折パターンを取得する手法ですX線が試料内部を透過する際に生じる回折を測定し、回折パターンを取得する手法です。
試料表面に凹凸の多い場合に有効な平行ビーム法、平滑な表面で高い角度分解能が得やすい集中法があります。透過法では、十分なX線が透過できるよう試料の厚みを調整する必要があります。
特徴・試料表面付近の結晶構造や結晶方位に関する情報を得ることができます。
・厚い試料や表面処理された試料の測定に適しています。
・試料ステージに直接試料を配置し測定します。
・試料内部の結晶構造や結晶方位に関する情報を得ることができます。
・少量の粉末試料や薄いフィルム状試料に適しています(特に試料表面の配向性の影響を抑制したい場合)。
・キャピラリーや薄い板状の試料ホルダーを用いて試料を固定し測定します。
・吸収補正が必要になる場合があります。
主な
用途
・バルク試料の結晶構造解析
・薄膜の表面構造解析
・表面粗さや膜厚の測定 など
・粉末試料の結晶構造解析
・フィルム状試料の構造解析
・試料内部の応力や歪みの測定 など

5.XRDの解析技術

XRDデータの代表的な解析手法としては、
・簡易定量を行う Reference Intensity Ratio (RIR) 法、
・結晶子サイズや格子ひずみを算出する Williamson-Hall (W-H) 法、
・結晶構造を精密化するリートベルト解析、
・残留応力解析
などがあります。


RIR法


RIR法は、データベース化されている参照強度比 (Reference Intensity Ratio) を用いて簡易的に定量値を算出する方法です。検量線の作成が不要なことから、標準試料の入手や参照試料の調整などの必要がありません。


W-H法


W-H法は、回折ピークの広がり (半値幅) から、結晶子サイズと格子ひずみを見積る解析手法です。結晶子サイズや格子ひずみの大きさは、回折ピークの広がりに影響を与えることを利用します。また、W-H法により得られた格子ひずみから転位密度を見積ることも可能です。


リートベルト解析


リートベルト解析は、XRDで得られた回折パターンと、想定される結晶構造モデルから理論的に得られる回折パターンを比較し、結晶構造を精密化する解析手法です。回折パターン全体を最小二乗法によるフィッティングすることで、回折パターンから様々な情報を引き出すことが可能です。また、複数の物質が存在し、多数の回折ピークが重なる場合でも、リートベルト解析による定量分析が可能です。


残留応力解析


残留応力解析は、回折パターンから材料内部の応力状態を非破壊で解析する手法です。具体的な手法としては、sin2ψ法や2D法などがあります。また、照射するX線ビーム径を細く絞ることで応力のマッピングをすることも可能です。

▶ 残留応力の分析事例:
X線回折 (XRD) 法による鋼板せん断加工部の残留応力測定 (F087)
マイクロX線回折 (XRD) 法によるスポット溶接部の残留応力解析 (I036)
X線回折 (XRD) 法による残留応力解析 (F043)

新型XRD装置の活用イメージ

新型XRDの導入により、以下のような分析もラボレベルで実施可能となりました。これらの受託分析に関してもすでに開始しております。

■ ラミネートセルのオペランド測定


✔ ラミネートセルのまま非破壊で測定が可能
✔ 二次元検出器+回転対陰極により、1点あたりわずか1分程度でデータの取得が可能
➡ 高レートな充放電にも対応可能
✔ ―10~110℃の温度制御が可能

■ 内部構造のXRDマッピング


✔ ラミネートセルを面内方向に移動させながら、各点のXRD測定が可能
➡ リン酸鉄リチウムイオン電池におけるLFP/FPの分布解析、リチウムイオン電池の反応むら評価などに活用可能

■ 高エネルギーX線源による高精度な構造評価


✔ 高エネルギーX線源により幅広いQレンジを確保 ➡ 結合長から結晶構造まで高精度に評価可能
✔ 二体分布関数 (PDF)、部分相関関数を求め、原子間距離や配位数を解析することが可能
✔ リバースモンテカルロ法を用いて原子配列の推定を行うことが可能
XRD測定は、SPring-8やNanoTerasu等の放射光施設でも可能です。ラボの分析装置では捉え難いより微量な成分の分析や高度なin-situ測定に活用することができます。放射光施設を利用した測定に関しても経験豊富な日産アークにご相談・ご依頼ください。



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