総合的な解析で、破損原因やメカニズムを解明します
プラスチック部材の破損原因調査
プラスチックの破損原因調査で重要となるのは、壊れたプラスチック部材に関してより多くの情報を収集すること、破断面およびその周辺のマクロ・ミクロの観察により、不具合発生の状況をできるだけ詳細に把握することです。それを基に破損原因の仮説を立て、破面解析やその他の分析法を決定します。これらを総合的に解析することにより、破損原因やメカニズムの推定を行います。最終的に推定した破壊原因やメカニズムの確認・検証を行います。
プラスチック材料における破壊様式の分類と事例
写真1はポリウレタンシャフト折損部の破断面です。破壊起点を中心に放射状模様およびストライエーション状模様が見られることから断続的に破壊したことがわかります。さらに、破壊起点部 (写真2) では材料表面付近の劣化層が疑われることから、イメージングFT-IR像 (図1) により、OH基とエステル基についてマッピングしました。劣化層ではOH基 (A部) が高めに検出されると共に、ポリウレタンのエステル基 (B部) の低下が認められました。これらのことから、ポリウレタンシャフトは加水分解によってエステル結合が分解し、劣化・破壊につながったことがわかりました。
| 分類 | 破面形態 | 特徴的な破面パターン |
|---|---|---|
| 脆性破壊 | 脆性破面 (平滑かつ、角ばった破面) | リバーパターン ウォルナーライン 主/二次クラックの合体 シェブロンパターン 脆性ストライエーション |
| 延性破壊 | 延性破面 (丸みを帯びた変形した破面) | カップ&コーン型 すべり面破壊 ディンプルの連結/合体 |
| クレージング を伴う破壊 (延性破壊に近い) | あばた状模様 (クレーズの痕跡) | 帯状配向帯 クレーズ ミラー領域/ミスト領域/ハックル領域 マッカレルパターン |
| 疲労破壊 | 脆性破面・延性破面 | 脆性ストライエーション 延性ストライエーション ミクロストライエーション クレージングを伴うストライエーション ラブマーク フィッシュアイ |
| 環境応力割れ (劣化) | 脆性破壊・一部延性破壊 | ミラー状破面 劣化層 表面クレーズ 表面腐食等 |
| 層間 もしくは 境界破壊 | 高次構造・相分離構造 を含む破面 | 球晶、海・島構造等 |