1.高分子材料の代表的な品質トラブル
高分子材料は、軽量で加工しやすく、耐食性に優れることから、自動車・電気・建築・医療など、幅広い分野で利用されています。一方で、材料特性や加工条件、使用環境の影響により、さまざまな品質トラブルが発生する可能性があります。代表的な品質トラブルと発生する現象を以下に示します。
| 分類 | 発見される現象 (不具合モード) |
| 破損・破壊 | ■ 割れる・欠ける (脆性破壊・疲労破壊・環境応力破壊・衝撃破壊) |
| 変形・寸法異常 | ■ 変形する (熱変形・クリープ変形) ■ 寸法が出ない (成形収縮異常) ■ 反る (配向変形・内部応力変形) |
| 外観不良 | ■ 白化する (応力白化・クレーズ) ■ 黄変する (色変化) ■ 色が合わない (色差) ■ 剥がれる (界面剥離・塗膜密着不良) ■ 異物状欠陥・黒点がある (異物欠陥・ゲル欠陥・炭化物) |
| 密封不良 | ■ 漏れる (シール不良・クラック漏れ) |
| 異音・摺動不良 | ■ 異音がする (スティックスリップ・摩耗) |
| 揮発・析出 | ■ 臭いがする (VOC放散) ■ 曇る (フォギング) ■ ベタつく・粉を吹く (ブリード・ブルーム) |
これらの品質トラブルは、材料選定・成形条件・設計・使用環境など、複数の要因が複雑に絡み合って発生します。そのため、発生した現象を正しく分類し、考えられる要因について仮説を立て、検証を重ねながら原因を特定することが、品質改善や再発防止には重要です。
今回は外観不良について、白化・黄変・変色の原因調査事例を解説します。
2.白化の原因調査事例 (軟質ナイロン製エアチューブ)
樹脂製品の表面に発生する白化は、外観不良として問題となるだけでなく、材料内部で起きている変化を示唆する重要な現象です。白化の要因はさまざまですが、今回は軟質ナイロン製エアチューブの表面に生じた白色析出物について、その原因を調査した事例をご紹介します。
製品は室温・暗所環境で段ボール箱に約1年間保管され、表面には数μm~10μm程度の粒状物が析出し、白化およびべたつきが確認されました。白化は製造直後には見られなくても、長期保管中に発生することがあります。そのため、原因を調査する際には、材料設計や成形条件、添加剤の選定との関連性を確認することが重要です。本事例では、成形温度が白化発生に影響した可能性があり、保管中の結晶化進行により樹脂内部の低分子成分が表面へ移行したことが一因であるとの仮説が挙げられます。
製品は室温・暗所環境で段ボール箱に約1年間保管され、表面には数μm~10μm程度の粒状物が析出し、白化およびべたつきが確認されました。白化は製造直後には見られなくても、長期保管中に発生することがあります。そのため、原因を調査する際には、材料設計や成形条件、添加剤の選定との関連性を確認することが重要です。本事例では、成形温度が白化発生に影響した可能性があり、保管中の結晶化進行により樹脂内部の低分子成分が表面へ移行したことが一因であるとの仮説が挙げられます。
そこで、表面に析出した白色析出物を採取し、フーリエ変換赤外分光法 (FT-IR) などにより組成を調査した結果、白色析出物は酸化防止剤とナイロンオリゴマーを主成分とする混合物であることが確認されました。保管中の結晶化進行により、ナイロンオリゴマーなどの低分子成分が樹脂内部から表面へ移行し、それに伴って酸化防止剤も析出した可能性が考えられます。
今回の事例では、軟質ナイロン製エアチューブ表面の白化は、酸化防止剤およびナイロンオリゴマーを主成分とする白色析出物によるものであり、長期保管中の結晶化進行や成形条件の影響により、樹脂内部に含まれる低分子成分が表面へ移行・析出したことが、要因であると推察されます。
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3.黄変の原因調査事例 (PC/ABS製内装部品)
樹脂製品の黄変は、自動車部品や家電製品などで見られる不具合の一つです。外観品質を損なうだけでなく、材料内部で進行する劣化の兆候を示している場合があります。今回は、自動車内装部品に使用されたPC/ABS樹脂部品の黄変原因を分析した事例をご紹介します。
対象部品は、新品と比較して黄変が確認されました。紫外可視分光分析の結果、黄変品では約400nm付近の吸収が増加しており、酸化劣化により生成した発色成分が青色光を吸収することで、補色効果による黄変が生じたと考えられました。原因として考えられるABS樹脂中のブタジエン成分の酸化劣化に着目し、FT-IRによる酸化生成物の確認・TEMによる内部構造観察・耐候試験による再現評価を実施しました。
対象部品は、新品と比較して黄変が確認されました。紫外可視分光分析の結果、黄変品では約400nm付近の吸収が増加しており、酸化劣化により生成した発色成分が青色光を吸収することで、補色効果による黄変が生じたと考えられました。原因として考えられるABS樹脂中のブタジエン成分の酸化劣化に着目し、FT-IRによる酸化生成物の確認・TEMによる内部構造観察・耐候試験による再現評価を実施しました。
黄変品の赤外スペクトルでは、1720cm⁻¹付近にカルボニル基由来の吸収ピークが確認されました。カルボニル基は樹脂の酸化劣化によって生成される代表的な官能基であり、材料内部で酸化反応が進行したことを示しています。TEM観察と画像解析の結果では、ABS樹脂中のブタジエン粒子数が大幅に減少していることが確認され、ブタジエン成分の酸化・変質が示唆されました。
さらに、耐候試験においてもブタジエン成分の劣化と黄変が再現され、推定した黄変メカニズムを裏付ける結果が得られました。以上の結果から、PC/ABS樹脂部品の黄変は、ABS中のブタジエンが光や熱の影響によって酸化し、生成した酸化物や発色成分が青色光を吸収することで発生したと考えられます。
樹脂製品の黄変は、単なる外観変化ではなく、材料内部で進行する化学的変化や劣化の兆候である場合があります。黄変の原因を明らかにするためには、発色要因の特定や劣化メカニズムの解析が重要です。光学分析、化学構造解析、微細構造観察、耐久試験など複数の評価手法を組み合わせることで、黄変の発生原因や進行過程を明らかにし、材料選定や品質改善につなげることができます。
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・樹脂の劣化要因を解き明かす- 光・熱による化学構造変化を特定 – (F180).
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樹脂製品の黄変は、単なる外観変化ではなく、材料内部で進行する化学的変化や劣化の兆候である場合があります。黄変の原因を明らかにするためには、発色要因の特定や劣化メカニズムの解析が重要です。光学分析、化学構造解析、微細構造観察、耐久試験など複数の評価手法を組み合わせることで、黄変の発生原因や進行過程を明らかにし、材料選定や品質改善につなげることができます。
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4.変色の原因調査事例 (PVC樹脂部品)
樹脂製品の変色は、材料そのものの劣化だけでなく、添加剤の変質や外部由来成分の付着によっても発生します。そのため、再発防止策を検討するには、まず変色に関与する成分を特定し、発生原因を推定することが重要です。今回は、白色のPVC樹脂部品が淡赤色に変色した事例について、LC-MS、GC-MS、NMRを組み合わせて変色原因を調査した事例をご紹介します。
対象となったPVC樹脂部品は、一部が白色から淡赤色に変色しています。変色部と未変色部を比較したところ、変色部から抽出したクロロホルム溶液に着色が確認されました。抽出液に色が確認されたことから、変色部には着色に関与する成分が存在していると考えられます。
対象となったPVC樹脂部品は、一部が白色から淡赤色に変色しています。変色部と未変色部を比較したところ、変色部から抽出したクロロホルム溶液に着色が確認されました。抽出液に色が確認されたことから、変色部には着色に関与する成分が存在していると考えられます。
変色原因を明らかにするため、変色部から抽出した成分について、複数の分析手法を用いて調査を行いました。変色トラブルでは、ポリマー分子そのものの構造変化・添加剤の変質・外部由来成分の付着など、複数の要因を考慮して解析を進める必要があります。本事例では、LC-MS・GC-MS・NMRを用いて得られる情報を組み合わせ、変色成分の構造解析と原因推定を行いました。
まず、試料抽出液のLC-MS分析 (①) により、550nm付近に吸収を示す変色成分を検出し、質量分析結果から組成式を C₁₂H₈N₂O₄ と推定しました。LC-MSは分子量や組成式に加え、可視光吸収情報も取得できるため、変色成分の探索に有効です。続いて、単離した成分のGC-MS分析 (②) では、質量スペクトルやライブラリ検索から類似構造をもつ化合物を確認しました。さらに、NMR分析 (③) により分子内の共有結合状態ならびにHモル比を解析し、推定した構造の妥当性を検証しました。このように、各分析手法から得られる情報を統合することで、変色成分の構造を段階的に明らかにし、原因物質の特定につなげることができました。
まず、試料抽出液のLC-MS分析 (①) により、550nm付近に吸収を示す変色成分を検出し、質量分析結果から組成式を C₁₂H₈N₂O₄ と推定しました。LC-MSは分子量や組成式に加え、可視光吸収情報も取得できるため、変色成分の探索に有効です。続いて、単離した成分のGC-MS分析 (②) では、質量スペクトルやライブラリ検索から類似構造をもつ化合物を確認しました。さらに、NMR分析 (③) により分子内の共有結合状態ならびにHモル比を解析し、推定した構造の妥当性を検証しました。このように、各分析手法から得られる情報を統合することで、変色成分の構造を段階的に明らかにし、原因物質の特定につなげることができました。
一連の分析結果から、変色原因物質は放線菌 Brevibacterium iodinum が産生する色素性代謝物「ヨージニン」であることが分かりました。本事例では、樹脂そのものの劣化や添加剤の変質ではなく、外部由来の放線菌が繁殖し、その際に生成されたヨージニンによって淡赤色の変色が生じたものと考えられます。樹脂製品の変色では、樹脂材料そのものに異常がなくても、微生物由来成分などの外部要因によって変色が生じる場合があるため、多角的な視点で原因を究明することが重要です。
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5.まとめ
高分子材料の外観不良は、材料劣化、添加剤の変質、低分子成分の移行、外部環境由来成分の付着など、さまざまな要因で発生します。そのため、外観変化だけで原因を判断するのではなく、表面観察、成分分析、構造解析、再現評価などを組み合わせた多角的な分析が重要です。日産アークでは、各種分析・解析技術を活用し、高分子材料における外観不良や劣化現象の原因究明を支援しています。品質課題の解決や製品信頼性の向上に向けて、お客様の問題解決をサポートします。
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