湿熱劣化させたエポキシ系接着剤の強度低下の現象解析事例

自動車業界では車両軽量化の動向から、構造用接着剤による接合が用いられています。その強度発現メカニズムは接着剤と被着体との界面だけでなく接着剤に含まれる多様なフィラーの効果により複雑に構成されています。エポキシ樹脂の構造用接着剤を用いた接着試験片について湿熱試験を行ったのち、アコースティック・エミッション法やAFMを用いたマルチスケールの物性解析、FT-IRの化学分析や破面観察などから劣化前後の破壊挙動の違いを評価しました。

アコースティック・エミッション (AE) 法による接着剤層の破壊モードの切り分け

Al板材をエポキシ系接着剤で貼り合わせ、湿熱耐久試験 (70℃/95%×60日) 後にDCB試験を行い、発生するAE信号を取得しました。その結果、湿熱品の剥離が開始する最大荷重は初期品より6割減少することや、剥離初期から最大荷重まで①、②の特徴的なAE信号が検出されることがわかりました。AE信号の周波数は材料の弾性率に比例することから、①はフィラーの破壊、②はフィラー/樹脂界面の剥離によるAE信号と推察されます。破面と併せて剥離モードを切り分けることが可能です。
DCB法
DCB 荷重変位曲線 AE 周波数解析
破面観察像

湿熱劣化したエポキシ樹脂マトリクスにおけるブタジエン減少とAFM弾性率分布

湿熱耐久した接着剤のエポキシ樹脂マトリクスではブタジエンの減少と弾性率の上昇がみられ、特に湿熱の影響が大きい端部B’は弾性率の上昇が顕著でした。ブタジエンはフィラーとの密着性を高める機能や、マトリクスへの柔軟性付与、クラック進展防止の機能があることから、接着剤は硬く脆くなったと考えられます。
断面観察像
FT-IR AFM
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