正極活物質の表面構造解析

正極活物質コート層の構造解析が可能となりました。従来法のナノビーム電子回折では、電子線に弱い試料や非晶質構造解析 (PDF解析) が困難でした。特殊制限視野絞りを用いることにより、局所領域での構造解析が可能となりました。

正極活物質コート層の構造解析

リチウムイオン電池は保存試験やサイクル試験に伴い、活物質粒子の割れ、結晶の乱れ、活物質中の元素溶出などにより、Liイオンの出入りが妨げられ、性能低下が生じます。これら活物質に起因する劣化を抑制する手段として、活物質表面をコートする方策が取られています。ここでは、表面コート層の構造解析例についてご紹介します。

高感度EDXマッピングによる元素分布

高感度EDXマッピングにより、活物質表面にアルミニウムと酸素からなるコート層が認められ、表面にアルミナ (Al2O3) が形成されていると推定されます。
一般的なコート層の場合、Liイオンの出入りに結晶質の方向性が存在すると抵抗増大となるため、方向性のない非晶質が望ましいと考えられています。しかし、EDXマッピングの結果のみでは、コート層の結晶質、非晶質が不明であるため、電子回折により判断する必要があります。

特殊制限視野絞りによる電子回折

標準的なTEM装置の絞り最小径はφ100nmですが、当社では新規装置のFEI社製Talosにφ20nmの特殊絞りを導入し、より局所領域から結晶情報を得ることができるようになりました。
活物質コート層に対し、絞り径φ100nmを用いて電子回折図形を取得すると、活物質の回折斑点が強調され、コート層からの情報を判断することが困難ですが、絞り径φ20nmを用いると非晶質特有のハローリングを有することが分かります。これらの結果より、非晶質アルミナであることが分かりました。

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