日産アークでは、マテリアルズ・インフォマティクスを研究開発のさまざまなフェーズで活用できるよう継続的に独自技術の開発を進め、お客さまの個別の課題やニーズに合わせたサービスの提供を進めています。
【目次】
1.日産アークのマテリアルズ・インフォマティクス
2.ハイスループット化
【活用事例】電池特性の比較
3.Active Learningの導入
【活用事例】磁気モーメントの改善
4.最後に
1.日産アークのマテリアルズ・インフォマティクス
マテリアルズ・インフォマティクス (MI: Materials Infomatics) の概略を図に示します。マテリアルズ・インフォマティクスは、学習用データを用いた「学習」と学習により得られた学習モデルを利用した「予測」の2つから構成されます。

MIの活用に向けては、学習用データを用いて、学習済みモデルを準備することが必要となります。学習には、学習用のデータが必要となりますが、これには
・公開データベースを活用する
・実験データを活用する
・シミュレーションを活用する
などの方法が考えられます。
公開データベースの活用では、例えば、Materials Project * などの公開データベースを利用することが考えられます。公開データベースを活用することで、手持ちのデータがない場合でもMIをスタートすることができます。この場合には、データベースにアクセスするために必要とされるAPI等に関する知識や技術が必要となります。
* https://next-gen.materialsproject.org/
学習用データとしてシミュレーション結果を利用する場合は、必要となるシミュレーション結果を効率的に生成することが重要です。素早く広範なデータを生成するために、シミュレーションの入力データの準備や出力されるデータの解析を自動化するハイスループット化技術が必要になります。
また、より少ないデータから効率よくMIをスタートできるようActive Learningなどの機械学習の導入も重要です。
当社では、MIに関する技術開発を継続することで、お客さまの個別の課題やニーズに合わせたサービスの提供を進めています。
2.ハイスループット化 (計算プロセスの高度自動化)
MIの学習用データとして、シミュレーション結果を利用する場合には、ハイスループット化を実現することが重要です。
目的に応じた計算範囲の設定等を行ったうえで、入力ファイルの生成、計算の実行を自動化するとともに、計算結果のデータベースへの格納、また次の計算条件の生成を含め計算プロセス全体の高度な自動化を実現しています。

【活用事例】電池特性の比較
リチウムイオン電池に関して、広範な電池材料を対象して網羅的に電池特性の探索を行った事例を示します。広範な材料を対象に安定性、反応性、作動電位などの評価をハイスループット化技術を活用して実施しました。
計算プロセス全体を高度に自動化し、ハイスループット化することにより、さまざまな領域の研究開発課題に対し、未知の材料を含ため網羅的な探索・スクリーニングを行うことが可能です。

3.Active Learningの導入
MIを活用するにあたり、より少ない学習用データからスタートできることは魅力的です。
機械学習を活用することで、少ない学習用データからMIをスタートし、得られた結果から次に必要となる学習用データを自ら作り出し、予測精度を向上させることが可能になってきています。このようなActive Learning技術の導入も進めています。

【活用事例】磁気モーメントの改善
Active Learningを活用して、Fe系磁性材料の磁気モーメントの改善を検討した事例を示します。この事例では、Active Learningを活用することで、わずか数ステップの計算で良好な結果が得られていることがわかります。
Active Learningの導入により、準備する学習用データ量の削減や計算コストの抑制が期待できます。

4.最後に
当社では、お客さまの個別の課題やニーズに合わせたマテリアルズ・インフォマティクスを提供できるよう継続的に独自技術の開発を進めています。
研究開発のさまざまなフェーズで当社のマテリアルズ・インフォマティクスをご活用ください。