ラマン法によるLIB正極の化学状態がわかるケミカルイメージング

ラマン法を用いてリチウムイオン二次電池の正極のケミカルイメージングができます。

ラマン法により正極材料のどんなことが分かるの?

正極の材料(活物質・導電助剤・バインダーなど)や化学状態の違いを検出することができます。また、マッピングにより画像化することができます。

ラマンマッピングにより電極材料や堆積物の分布、また活物質の状態を一目で把握できるように画像化することができます。さらに、マップ内の測定ポイントまたは材料や状態別に平均化したラマンスペクトルから化学状態を解析することができます。
日産アークでは、オリジナルの大気非暴露対応共焦点ラマン分析装置を用いて高精度のマッピングを行うことが可能です(図1)。

なぜ断面のマッピングは必要なの?

電極は数十~百数十μmの厚みがあり、電池としての反応は一様ではありません。このため断面全体での情報が重要になります。

図2は正極断面のラマンマッピング結果です。活物質とその間にあるバインダーおよび導電助剤の分布を画像化することができます。また、スペクトルから活物質はLi(Co,Mn,Ni)O2、導電助剤はアモルファスカーボン、バインダーはPVDFであることが分かります。
断面はAr雰囲気グローブボックス内で作製しているため、酸化等による変質を受けずに測定することができます。

正極活物質の状態からはどんなことが分かるの?

電池の劣化原因の一つに、Liの固定化があります。ラマン法では正極活物質のLi価数変化をピークシフトとして捉えることが可能です。

図3は初期品正極の放電状態と充電状態について、活物質のラマンピーク中心の波数でマッピングした結果です。これにより、正極活物質の状態比較が可能です。充電することにより、正極からLiが抜けることで活物質のピーク中心が低波数側へシフトしたことが分かります。
この変化を用いて、ラマン法では劣化品におけるLi価数の低下した活物質の分布をイメージにすることも可能です。

材料の分布から何が分かるの?

例えば導電助剤の分布から電極の内部抵抗に直結する導電ネットワークを可視化することができます。

図4は正極断面の導電助剤の分布を調べたものです。抵抗の低い電極では導電助剤が電極層全体に分布しており、水色で示した導電ネットワークが表面から集電箔面までほぼ繋がっていますが、抵抗の高い電極は導電助剤がまばらで前者と比較してネットワークが短く分断されている様子が分かります。
このように、断面ラマンマッピングでは、活物質のみにならず導電助剤やバインダの情報も得られるので、合材電極に対して様々なアプローチをすることが可能です。

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