走査プローブ顕微鏡 (SPM) をわかりやすく解説 

材料の分析でよく用いられる分析機器について、その原理、構成、特徴、分析できる内容などを「わかりやすく解説」します。ここでは試料表面をなぞること表面の状態を把握することが可能な「 SPM (Scanning Probe Microscope) 」について解説します。
走査プローブを用いて試料表面の様々な情報をイメージングします。

走査プローブの原理

走査プローブの仕組み
走査プローブは、プールの飛び込み板のように、一端を固定して他の端を自由に動く状態にしているカンチレバー (片持ち梁) の構造になっています。動く側の梁の先端に下向きにプローブを設置し、レーザー光をプローブの背面に当て、その反射を光検出器で受けています。試料の表面をなぞると、表面のでこぼこに合わせて反射の角度が変わりますので、反射を常に光検出器で受けるようにフィードバックをかけて位置を調整し、そのデータをもとにイメージを作っていきます。

プローブの太さは?

針先の先端の太さは半径10nmで長さは10μmくらいです。観察できる範囲は最大で約80μm角で1cm角の試料のごくわずかな部分を走査しています。

SPMの種類

走査プローブの原理を使った顕微鏡は、現在、AFM (原子間力顕微鏡) を中心にLFM (水平力顕微鏡) 、MFM (磁気力顕微鏡) など100種類以上あります。日産アークが提供するサービスは現在約20種類です。

シリカ粒子含有天然ゴムの高次構造の観察結果です。左側はAFMイメージ、右側はAFM位相イメージで観察したものです。右側のイメージでは明るい部位のシリカ粒子、暗い部位の天然ゴムをはっきり識別しています。

試料ご提供:粷谷信三先生 (京都大学) 、池田裕子先生 (京都工芸繊維大学)

測定モードを変えることで試料表面の様々な性質・特性を把握できます

SPMは、プローブと呼ばれる探針を用いて試料の表面を走査する (なぞる) ことにより、そのでこぼこ具合や物性の違い、分布をイメージとしてとらえることのできる手法、測定モードおよび装置の総称です。
SPMはプローブの種類や取り出す電気信号の種類を変えることで、形状や表面のでこぼこだけでなく、機械的な性質・電気的な性質・磁気的な性質・熱的な性質・光学的な性質などさまざまな性質を調べることができます。一般にSPMは、試料の表面の粗さなどを調べるAFMがよく用いられます。
これは試料とプローブを接近させた時に生まれる、くっつこうとする力と離れようとする力の釣り合いの状態を調べるものです。

AFM以外にも、ポリマーの高次構造などをより詳細に観察するAFM位相イメージング、
弾性率を調べるナノインデンテーションなど、
測定モードの違いによって、弾性率・摩擦力・吸着力・電流分布・熱伝導分布など試料のさまざまな性質をイメージすることができます。

測定に関するアイデア次第でSPMの可能性はさらに広がります。
例えば温度を変えたり、空気以外のガス中で計測したりなど環境制御型のSPMも実用化されています。

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