SEM、TEMによるLIB正極の形態観察および元素分析

電子顕微鏡を用いてリチウムイオン二次電池の正極の形態観察および元素分析ができます。

形態観察や元素分析からどんなことが分かるの?

電極層の厚さや表面形状、構成物質の形状、分布状態が分かります。

正極はLiイオンや電子の源である活物質の他にこれらの通り道となる導電助剤やバインダーなどから構成されます。これらの形状や分布が変化することで電子やイオンの伝導パスの変化が起こり、電池性能に影響するため、その状態を知っておくことは重要です。
また、充放電に伴うLiの挿入・脱離により、活物質にクラックやボイドが生じることがあります。その様子を知ることも、活物質の特性を知る上で重要な情報です。

観察や分析にはどのような装置を使うの?

目的や領域の大きさにより観察はOM,SEM,SIM,TEM、分析はEPMAやEDXを使い分けします。SEMやSIMは比較的低倍率で広範囲の情報、TEMは高倍率で微細領域の情報が得られます(図2)。

SEM-EPMA装置(写真1)を用いて、放電状態正極のSEM(走査電子顕微鏡)観察とEPMA(電子線プローブマイクロアナライザー)分析を行った結果を図3に示します。SEM観察から、正極には大きさ10数μmと数μmの2種類の活物質粒子が見られます。EPMA分析から、これらはともにMn,Co,Niを含み組成にも大きな差はないと判断されました。さらに主にバインダー由来のFが電極表面に多く存在していることも分かります。
FIB-SIM装置(写真2)で、正極の一部を拡大しSEMとSIM(走査イオン顕微鏡)で撮影した結果を図4に示します。SIMはSEMと比べて組成や結晶方位によるコントラストが強く現れます。SIM観察の結果から、2種類の大きさの活物質粒子はともに大きさ数100nm~1μmの粒子からなることがわかりました。さらに、充電後の活物質には粒界に沿ってクラックが生じている様子が観測されました。

TEMで得られる微細領域の情報はどのようなものなの?

電子回折法や明・暗視野法、高分解能法による微細組織解析から結晶構造やその局所的な乱れを、EDXやEELSによる元素分析ではより局所領域の元素分布を知ることができます。

正極活物質の劣化には、その結晶構造や微細組織の変化による電子やイオン伝導性の局所的な変化が関係します。そのためTEM及びEDX(エネルギー分散型X線分析), EELS(電子エネルギー損失分光)による分析・解析により、劣化の要因を知ることは重要です。
図5は放電状態、充電状態の正極活物質TEM観察結果とEDX分析結果です。放電状態と充電状態、さらには大きさ10数μmと数μmの2種類の活物質粒子とで、Mn,Co,Niの組成に顕著な差はないことが確認できました。
図6は放電状態と充電状態の活物質粒子から得られた電子回折図形です。放電状態の試料では、a,bのように層状岩塩型構造の回折図形を示す領域と、cのようにスピネル構造の回折図形を示す領域が見られました。このことから、層状岩塩とスピネルの2つの構造が共存していることが分かりました。一方、充電状態の電子回折図形(d,e)には、層状岩塩型構造の反射の他に、赤矢印で示すスピネル構造の反射位置に弱い反射や散漫散乱が見られました。このことから充電状態では層状岩塩型構造にわずかにスピネル構造が共存していることがわかりました。

×

分析についてのご相談などお気軽にお問い合わせください。