ラマン (Raman) 分光法と共焦点マッピングをわかりやすく解説


ラマン分光法 (Raman Spectroscopy) についてくわしく解説します。

【目次】
 1.ラマン分光法とは
 2.ラマン分光法の原理
 3.ラマン分光法からわかること
 4.共焦点ラマン分光法
 5.ラマン分光法の強みと留意点
 6.各領域の分析事例


1.ラマン分光法とは

ラマン分光法 (Raman Spectroscopy) は、試料にレーザー光を照射し、散乱する光 (ラマン散乱光) の波長変化 (ラマンシフト) を分析する手法で、分子構造や結晶構造、化学組成などを非接触で分析することが可能です。

ラマン分光法では、液体・固体・気体問わず、微量な試料や容器越しの分析が可能で、樹脂材料や電池材料、化粧品・食品など幅広い範囲の試料に対応することが可能です。

2.ラマン分光法の原理

電磁波である光は周期的な電場を形成します。原子に光を当てるとマイナスに帯電した電子雲はプラスの電場へ、プラスを帯びた原子核は重いため僅かですがマイナス側に引き寄せられます。このとき生じる分極の度合いを双極子とよび、その振動により散乱光が放出されます。
ラマン分光法の原理
光の照射により発生する散乱光は、照射した光と波長が同一のレイリー散乱光と分子との相互作用により波長が変化したストークス散乱光、アンチストークス散乱光の3つの成分からなります。一般的なラマン分光法ではこれらのうち、ストークス散乱光を観測します。
光の散乱
ラマン分光法は、試料とのエネルギーのやり取りの結果生じる波長の変化 (シフト) を観察することで分子の情報を得ます。このシフト量を横軸にし、縦軸にその強度をプロットしたものがラマンスペクトルです。このスペクトルを解析することで分子内部の情報を得ることができます。

3.ラマン分光法からわかること

ラマンスペクトルから試料に含まれる成分を知ることができますが、それ以外にも多くの情報を得ることができます。

ラマンスペクトルのそれぞれのピークからは対応する成分の濃度、結晶性、作用している応力やひずみに関する情報を得ることが可能です。

また、ピーク間の相対強度を比較することで、構造変化に関する情報を得ることも可能です。

4.共焦点ラマン分光法

共焦点ラマン分光法は、ラマン分光法の原理をもちいて試料内部を非破壊・非接触で三次元測定ができる手法です。対物レンズと検出器側のレンズの焦点を共役配置にすることで、~400nmの空間分解能で試料の状態や分布を観測可能です。
高感度なCCDカメラをもちいることで、高速で三次元の可視化が可能です。つまり、真空状態を必要としないことから、ゲル状や液状の試料も観察することができます。

5.ラマン分光法の強みと留意点


強み



  ・非破壊・高分解能:透明〜半透明材料内部を3Dで観察可能。
  ・炭素材料に高感度:グラファイト、CB、DLC、ダイヤモンドなどを識別。
  ・容器越し測定:水中異物や液体をそのまま分析可能。専用セルで電池の観測も可能。


主な適用例


・透明フィルム内部の添加剤分散状態(可視化)
白色半透明PEフィルム中の酸化チタン粒子の3Dマッピング。粒子のサイズ・分散状態を一目で把握できる。
・炭素材料の判別
グラファイト、木炭、カーボンブラック、DLC、ダイヤモンドなどの判別。結晶性、欠陥、構造の違いをスペクトルから解析可能。
・水や液体中の異物分析(容器越し)
ガラス瓶内部の水中異物を、取り出さずに定性。差分析により容器内部、水中の異物を特定。
・蛍光が強い材料の分析
励起波長切り替えにより、蛍光妨害を軽減。特にエラストマー等で有効。

留意点


  ・蛍光は励起波長変更でも完全に回避できない場合がある。
  ・材料の厚み・散乱により、測定できる深さ・分解能が制限される。
  ・困難な試料は FT-IR・XPS など他手法の併用が有効。


まとめ


ラマン分光法は、非破壊・非接触・高い共焦点性など、多くの強みを持つ柔軟性の高い分析手法です。一方で、蛍光干渉や試料特性に伴う制限も存在するため、適切な条件設定や他手法との併用が重要です。

6.各領域の分析事例

【ヘルスケア(化粧品、食品)】
 ・共焦点ラマンマッピングによるスキンケア膜の三次元分布観察 (F147)
 ・共焦点ラマンマッピングによるスキンケア膜の三次元分布の可視化 (F140)
 ・共焦点ラマン分光法による乳液の分散評価 (F033)
 ・共焦点ラマン分光法による粉体の成分分散状態分析 (F115)
 ・共焦点顕微ラマン分光法を用いたプレミックス粉の原材料分析 (F163)
 ・顕微ラマン分光法を用いた天然高分子の構造解析 ~デンプン粒子の構造解析~ (F172)
 ・顕微ラマン分光法を用いた天然高分子の構造解析 ~加工品の構造解析と物性変化推定~ (F173)
 ・ラマン分光法を用いた食品分析:油脂の分析 (H005)

【リチウムイオン電池】
 ・ラマン分光によるSi系活物質を含む混合電極の状態分布分析 (F506)
 ・振動分光 (FT-IR、ラマン分光法) によるLIBセパレータの組成分析 (LIB012)
 ・先進LIB用混合電極の各種分光法を用いた劣化解析 (F501)
 ・AFMによる先進LIB用混合電極被膜の弾性率と膜厚分析 (F504)
 ・C-AFMによるLIB用混合電極活物質の導電性評価 (F505)

【全固体電池】
 ・全固体電池のラマンマッピングによる劣化固体電解質の可視化 (F526)
 ・XRD、ラマン、NMRによる硫化物系固体電解質の構造解析 (F600)

【樹脂】
 ・共焦点ラマン分光法による樹脂の硬化過程分析 (F171)
 ・三次元ラマンマッピングによるPA66射出成形品の結晶性評価 (F125)
 ・広域ラマンマッピング法によるポリマーアロイの組成分布評価 (F083)

【トライボ被膜】
 ・ラマン分光法とAFMによる摩擦低減メカニズムの解析 (F159)


【半導体】
 ・ラマン分光法を用いたSiCパワー半導体の構造評価 (F137)


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